大郷粕川を元気にする協議会

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大郷の未来を拓く - 農業再生・新産業創出・コミュニティ活性化への挑戦 -



報告者:大郷粕川を元気にする協議会


1. 提案の背景



 大郷町は仙台市に近接するという立地上の強みを有している一方、地域農業は急速な高齢化と若年層の担い手不足という深刻な課題に直面しています。特に、農業経営の後継者不足は地域全体の農業存続に大きな影響を及ぼしており、宮城県全体の平均を下回る後継者率が示すとおり、持続可能な農業経営の実現は喫緊の課題です。

 また、注目すべき新たな取り組みとして大豆ミートの活用が挙げられます。大豆ミートは、地域産大豆の利用促進や地産地消の推進に寄与するだけでなく、加工による付加価値向上を通じて農家の収益拡大に貢献する可能性を秘めています。これにより、地域資源をこれまで以上に効果的に活用し、地域経済の活性化や農業収益の向上、さらには消費者の健康志向や環境意識の高まりに対応した新たな市場の創出が期待されます。

 さらに、令和元年の台風19号による甚大な浸水被害は、特に粕川地区において農地や住居に大きな打撃を与え、地域コミュニティの基盤を揺るがす深刻な影響をもたらしました。被災地域では住民間の交流機会が著しく減少し、かつて活発であった地域イベントも衰退するなど、コミュニティの再生が強く求められる状況にあります。

 以上の背景を踏まえ、地域住民、行政、農業団体が一体となり、農業再建と新たな産業の創出、さらにコミュニティの活性化に向けた取り組みが急務とされています。これにより、安心して暮らせる持続可能な地域社会の実現と、次世代の人材育成が期待されます。

2. 実証活動の成果



 2.1農業体験の実証結果

【実施内容】
・令和5年度から令和6年度にかけ、餅つき体験、味噌づくり体験、枝豆収穫・ずんだ餅作り体験の3種類のイベントを各1回実施、延べ約50名が参加。
・本体験プログラムは、伝統的な食文化と農業体験の融合を目的とし、新規就農者との意見交換、アンケート調査、視察同行を通じ、農業の意義と地域資源の活用を体感できる内容とした。
・対象は、子ども連れのファミリー層、女性、シニア層など幅広い世代とし、各体験は地域の伝統行事である餅つき、地域産大豆を活用した味噌づくり、枝豆収穫を基にしたずんだ餅作りなど、具体的かつ実践的な内容で構成。

【参加者の反応】
・餅つき体験:初参加者が多く、体験後のアンケートでは高評価を得た。伝統的な餅つきの技法や多彩な味付けの工夫に感銘を受けたとの声が多数。
・味噌づくり体験:幅広い年齢層が参加、特に60代以上の参加者から「昔の体験を思い出し、懐かしさを感じた」「家族で楽しめた」といった意見が多数あり、地域農産物への理解と愛着が深まった。
・枝豆収穫・ずんだ餅作り体験:親子連れや女性の参加が目立ち、実際に手を動かす体験を通じ、地域食文化や農業現場の魅力を体感できた。

【今後の課題と改善点】
・体験の多様化:餅つき、味噌づくり、ずんだ餅作りに加え、豆腐作りなど、他の伝統的な調理体験の導入を検討。
・長期的な参加促進策:継続的な参加を促すため、会員制度の導入や定期開催のスケジュール整備、SNSやウェブ広告を活用した広報戦略の強化を図る。
・農家への負担軽減:現場での運営準備や体制の見直し、専門スタッフの配置などを検討し、農家の負担を軽減する仕組みを構築。
・農業体験の収益化:体験料金の見直しや、体験後の商品購入につなげる仕組みを検討。

2.2大豆ミートの実証結果

【実施内容】
・先進地域である山形県金山町および福島県古殿町への視察研修を実施。現地企業の大豆ミート製造プロセス、販売戦略、地域連携の取り組みを学び、地元大豆の活用および生産者との連携強化に向けた示唆を得た。
・大郷町開発センターにて試食会を開催。ミンチやブロックタイプの大豆ミートを用いたドライカレー蒲焼き、トマトソースパスタ、大豆粉パンケーキなど全6品を提供、実際の調理工程を通じ、製品の味、食感、使いやすさを評価。実践調理により、調理工程の改善点や戻し作業の工夫が明確になった。
・町内の学校給食に大豆ミートを試験導入、子どもたちへの食育および健康促進の観点から評価。低脂肪、高タンパクな大豆ミートの魅力が、学校現場でも受け入れられる可能性を確認。
・地元シェフと連携し、地域食材と大豆ミートを組み合わせたオリジナルレシピを開発。新たな料理メニューの試作、試食会を通じ、製品化に向けた具体的な方向性を模索。

【需要の可能性】
・消費者の反応:実施した試食会および試供品配布により、特に「蒲焼き」や「ドライカレー」といった加工品は、味や食感ともに高い評価を受け、健康志向や環境配慮の視点から支持された。
・リピート意向:アンケート結果から、今後も継続して大豆ミート製品を利用したいとの意見が多数確認され、需要拡大と市場浸透の可能性が示唆された。

【大豆生産者との連携】
・地元農家との契約栽培の可能性を検討、今後の大豆供給体制の強化を目指すとともに、地元特産の大豆を活用することで、製品の付加価値向上および地産地消の推進が期待される。

【商品化・販路開拓の課題と展望】
・課題:加工過程における大豆特有の香りや水分調整など、製品改良が必要な点が指摘。また、現状の販売チャネルが限定的であるため、認知度向上と販路拡大が求められる。
・大豆ミート市場は未成熟であり、需要拡大には時間を要する。
・現段階では家庭での普及は難しく、完成品の提供または飲食店での提供が現実的。
・展望:地域の飲食店、学校給食センター、さらには小売店との連携強化により、販売チャネルの拡大を図るとともに、「大郷町産大豆ミート」としてブランド化を推進、地域特産品としての地位確立を目指す。これにより、持続可能な地域農業と食文化の発展に寄与する展開が期待される。

2.3コミュニティ再生の実証結果

【実施内容】
・令和4年度~令和6年度にかけ、粕川地区を中心に複数回の交流イベント、ワークショップ、検討会を実施。
・イベント内容は、伝統行事(「どんと祭」や「ミズベで収穫祭」など)や地域特性を活かした試食会、コミュニティワークショップ、検討会形式の座談会など多岐にわたり、住民間の意見交換や情報共有を促進。
・参加者層は、行政区長、住民代表、子育て世代、高齢者など幅広く、地域の歴史や伝統、食文化に関する議論が交わされ、住民同士の新たな連携が生まれる場となった。
・農業体験や大豆ミートの試食会、実践調理といった活動を通じ、地域内での地元産品の認知度向上や消費拡大を図った。
・これらの活動は、地域住民同士の協力関係の構築や、行政、地元企業との連携強化に寄与し、コミュニティの絆を深める効果が確認された。

【課題と今後の取り組みの方向性】
・若年層や働き盛り世代の参加率が低いことが課題として浮上。参加しやすい時間帯や、子ども向け、あるいはオンラインでの参加機会を提供するなど、多様な世代に対応した企画の充実が求められる。
・住民同士の交流やイベント運営の継続には、安定した資金調達が不可欠。行政や外部パートナーとの連携を強化し、補助金、クラウドファンディングなど多角的な資金調達方法の検討が必要。
・参加者の意見を定期的にアンケート調査等でフィードバックし、運営体制の見直しや負担軽減策(インセンティブ制度や専門スタッフの配置など)の導入を進める必要がある。

3.提案内容



3.1. 農業体験プログラムの継続・拡充
【課題】
・継続性・多様性の確保
既存の体験プログラム(餅つき、味噌づくり、ずんだ餅作りなど)のみでは参加者の幅広いニーズに対応しきれておらず、内容の多様化が求められる。
・農家側の運営負担
農家が現場で体験を運営する負担が大きく、長期的な継続実施に支障が出る可能性がある。
・新規参加者獲得とリピーター育成
若年層や新規参加者の獲得、さらに一度参加した方を継続的なリピーターへとつなげる仕組みが不十分である。
・体験の収益化 現状、体験料金に依存しており十分な収益が確保できていない。さらに、体験後に地元農産物や関連商品の購入につなげる仕組みが整っておらず、体験そのものを収益向上の機会に結びつける余地がある。

【具体策】
・運営体制の専門化と分担体制の確立
地元自治体、農業団体と連携し、専任スタッフやボランティアチームを組織。農業団体は体験の実施部分に専念できるよう、運営、広報、集客などは専門チームに分担し、全体の負担を軽減する。
・プログラムのカリキュラム化と多様化
従来の体験内容に加え、豆腐作りなど他の伝統体験をカリキュラムに組み込み、年間を通じた多様な体験メニューを整備する。参加農業団体を拡充し体験ごとの実施マニュアルを作成。誰でも一定のクオリティで運営できる体制を構築する。
・デジタルプロモーションとフィードバックの活用
SNSや専用ウェブサイトを活用し、体験の模様や参加者の声を効果的に発信。これにより認知度を向上させ、新規参加者の獲得およびリピーターの育成を図る。オンライン予約システムの導入により、参加者管理を効率化し、体験後のアンケート結果をもとにPDCAサイクルを確立する。
・体験の収益化促進策
体験料金の見直し:単発参加に加え、年間パスや会員制度の導入でリピーター向けの料金プランを設定し、収益の安定化を目指す。
体験後の商品購入促進:体験に連動した地元農産物や加工品(味噌、ずんだ餅原材料、オリジナルレシピ商品など)の販売、ふるさと納税やオンラインショップの整備により、体験自体を収益向上の機会として最大化する。
クロスプロモーション:体験プログラム参加者向けに、次回体験割引や商品のセット購入を実施し、体験と商品購入の相乗効果を狙う。

3.2. 大豆ミートの地域特産化
【課題】
・製品改良と品質の安定化
大豆特有の香りや水分調整の問題により、製品の味や食感の向上が必要。
・販路の限定性と認知度不足
販売チャネルが限定され、消費機会が少ないため、一般家庭や広域市場への普及が進まず、認知度向上が急務である。
・ブランド化
地域特産品としての地位確立に向けたブランド化戦略が不十分である。
・収益化の課題
製品改良、試作段階での初期投資が大きく、収益に直結する販売戦略や価格設定など、事業全体の収益性確保が求められる。

【具体策】
・製品開発プロジェクト
地元シェフ、食品研究機関、製造業者との連携で共同開発プロジェクトを立ち上げ、試食会やフィードバックを迅速に反映する仕組みを整備し、製品完成度の向上を図る。
さらに、事業を請け負う実績ある企業の探索、選定を行い、専門的な技術とノウハウを導入することで、開発プロセスの効率化を目指す。
・販路拡大のための戦略
地域の飲食店、学校給食センター、小売店、道の駅、オンラインストア、ふるさと納税返礼品など、多様な販売チャネルを開拓。
・ブランド化
「大郷町産大豆ミート」としてブランド化を推進、ロゴマークやパッケージデザインの開発、地域ストーリーを重視した広報活動、地域イベントでのPR、料理コンテストの開催など、地域特産品としての地位確立を目指す。
・プロトタイプ評価と市場テスト
製品のプロトタイプを限定販売、試食イベントで評価し、消費者の反応を踏まえた量産化計画を策定する。
・収益化戦略の確立
初期投資回収と収益性向上を意識した販売モデル(セット販売、定期便、会員制度など)を導入する。
オリジナルレシピの開発や地域食材との組み合わせによる付加価値商品の企画で、消費者の購買意欲を刺激する。
試作段階での補助金やクラウドファンディングを活用し、リスクを軽減しながら事業化を推進する。

3.3. コミュニティ活動の強化
【課題】
・若年層や働き盛り世代の参加率の低さ
若年層や働き盛り世代が参加しにくい状況が続き、地域全体の活性化や新たなアイデアの共有が阻害される恐れがある。
・イベント運営における継続的な資金調達と運営負担
イベントの実施には、一時的な資金や限られた人員に依存しており、継続的な運営体制の確保と資金調達が大きな課題となっている。
・住民間の交流や意見交換の持続的仕組みの整備
一過性のイベントに留まらず、住民が継続して意見交換や交流を行える仕組みが整備されていないため、地域内の連携強化が進みにくい。

【具体策】
・運営委員会の設立と役割分担
行政、住民代表、地域企業、学校関係者など、各層の代表が参加する運営委員会を設置。定例会議を通じてイベントの企画・運営、フィードバックの収集と改善策を検討する。
イベントごとに運営委員会を組織し、役割分担を明確化することで、運営負担が特定のメンバーに偏らない体制を構築する。
定期的なイベント計画を策定し、スケジュールや予算の見通しを明確にすることで、継続的な運営の安定性を高める。
・資金調達と協賛の多角化
地元自治体、地域振興補助金、クラウドファンディング、民間企業からの協賛など、複数の資金源を確保。特に、地域ブランドの確立に寄与する企業との連携を深め、スポンサーシップ補助金や助成金を募る。
・住民間の交流や意見交換の仕組みの整備
定期的な座談会やワークショップを開催し、住民が自由に意見交換できる場を設ける。
イベント後にアンケートやフィードバックセッションを実施し、住民の声を次回の企画に反映する仕組みを導入する。
町全体で取り組む経済的な結びつきが期待できる事業(例:特産品の販売促進)も模索し、地域経済の活性化と連携強化を目指す。

4.提案の総括



 本提案は、農業体験プログラム、大豆ミートの地域特産化、コミュニティ活動の強化という三本の柱が互いに補完し合うことで、地域全体の活性化と持続可能な経済発展を実現する包括的なアプローチであり、地域の歴史・文化、レクリエーション資源も活用され、各施策の効果が一層高まることが期待される。

 農業体験プログラムでは、多様化と運営体制の専門化により、参加者の満足度が向上し、体験後の地元産品購入促進へと直結する仕組みが構築される。これにより、農家と地域企業が連携した収益モデルが形成され、地域経済の底上げが図られる。

 大豆ミートプロジェクトでは、地元の食文化や技術力を集約し、従来の課題を解消した高品質な製品を市場に投入することで、「大郷町産」というブランド力が確立される。これにより、飲食店や学校給食、直売所といった多様な販路が拡大し、地域外への波及効果も期待できる。加えて、付加価値商品やセット販売の導入により、さらなる収益性向上が図られる。

 コミュニティ活動の強化は、住民同士の結びつきを深め、若年層をはじめとする多世代の参加を促すことで、地域活性化の基盤を支える重要な要素となる。運営委員会や定期イベントなど、交流の場を設けることで、各施策に対するフィードバックが迅速に反映され、農業体験プログラムや大豆ミートの開発においても改善や新たなアイデアが生まれる好循環が期待される。

 これらの施策が、大郷町が取り組む川街プロジェクトやスポーツパーク構想と連携することで、個々の取り組み以上の相乗効果を発揮し、地域全体のブランド価値がさらに向上する。地域内で生まれた交流や情報共有が、新たな地域資源の発掘や追加プロジェクトの立案につながり、結果として地域住民の生活の質が向上し、地方創生や持続可能な地域経済の実現に大きく寄与することが期待される。